控訴をするだろうけれど、ひっくり返るかなぁ [法律]
江東区内で発生した女性殺害事件の第1審判決が、今日東京地裁でありました。
判決は、皆さんご承知の通り無期懲役です。
被告の本音かどうかわかりませんが、彼は、極刑を望んでいました。
そして検察の求刑も極刑でした。
判決が無期なわけですから控訴するでしょう。
高裁の判断がどうなるかわかりませんが、
あたしは地裁判決を支持するように思います。
殺人罪は、死刑・無期・5年以上20年以下の懲役と法定刑なので、
被害者がたとえ1人であっても極刑を選択することは可能です。
極論をいえば、殺人未遂であっても選択することが出来ます。
だって未遂を規定した刑法203条は、未遂も罰するとしか書かれていません。
未遂について書かれている43条にも“刑を減軽することが出来る”とは書いてありますが、
必ず既遂犯よりも未遂犯を軽く処罰しなければいけないとは書いていません。
ただ慣例上未遂犯は、あまり重く処罰をしていないだけです。
話しを高裁が出すであろう判決についてに戻しますね。
死刑基準をめぐっては、昭和58年7月の最高裁判決(通称:永山基準)の中で、
犯罪の性質、犯行の動機、態様(特に殺害方法の執拗性、残虐性)、
結果の重大性(特に殺害された被害者の数)など9項目を提示し、
やむを得ない場合に死刑は許されると判示しました。
ちなみにこの事件での殺害人数は、4人だったんです。
ですからこの事件以降、
概ね3人以上を殺した場合ほぼ例外なく極刑が選択されました。
2人の場合は、殺害方法の残虐性や前科の有無によって場合によって選択されましたが、
殺人罪のみだと1人の場合選択はされません。
コレは、大法廷ではなく小法廷で下された判決なんですが、
下級審などで一般化されています。
裁判官は、大抵上級審(最高裁など)の判例をやはり参考にして判決を下します。
なので今回の場合、犯行は相当残虐ですよ。計画性云々を別にしてですけど。
ただ被害者の数が1人なんですよ。
だから東京地裁は、
最高裁の基準を厳格に当てはめて極刑ではなく無期を選択したのでしょう。
最近厳罰化が進んでいるので、
被害者の数が1人であっても極刑を選択することがまま見られます。
犯罪者であっても1人の命をこの世から抹殺するわけですから、
安易に選択をするものではないという事を、
3ヶ月後に迫った裁判員制度を前に裁判所として示したのでしょう。
でも最近の厳罰傾向以前にも、
被害者数が1人の場合でも強盗致傷(殺意の有無は問いません)や
身代金目的で誘拐をした上で人質を殺してしまった場合などでは
極刑が選択されたケースもあります。
嘘か真かわかりませんけれど、
警察官を殺した場合も極刑が選択されるなんていうのを聞いたことがあります。
でもたとえ1人であろうと、かけがえのない命です。
“命の重さは、地球のよりも重いものである”と別の裁判官が言っています。
だから江戸時代みたいに、人を殺めたら死刑というのは、
ある意味で理に適ってはいるんですよ。
たしか江戸時代では火付け、一定の金額以上の泥棒なんかも死刑の対象でした。
といったところで、今日は終わり。また、あした。
難しいですね。冤罪もあるから、1人で極刑は難しいことにもなるのかも。
by M副室長 (2009-02-18 21:57)